梅雨になると、「エアコンの除湿機能を使ってみたけど、全然、湿度が下がらない」というご相談をよくいただきます。
エアコンには、確かに「除湿(ドライ)機能」はあるのですが、この機能は除湿機と違い、効果を発揮できる条件(室温・湿度など)が限られています。
この記事では、どうして湿度が下がらないのか、除湿機能が効かないときに湿度を下げるためにはどうしたらいいのかなどについて解説したいと思います。
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エアコンの除湿機能が効かない原因
エアコンの除湿機能が効かない原因には、「室温・湿度が低くて効かない」と「エアコンの運転機能の問題で効かない」の2種類があります。
「室温・湿度が低くて効かない」のは、エアコンの除湿機能の仕組みによるもので、故障ではありません。
また、「エアコンの運転機能の問題」についても、掃除不足やエアコンの設置場所と建物の構造による問題で起こるものなので、故障ではありません。
では、「故障じゃないのに、なんで除湿できないの?」という方もいらっしゃると思いますので、次の見出しから理由を詳しく解説したいと思います。
エアコンの除湿機能は「温度を下げて湿度を下げる」仕組み
一般の方が「除湿機能」という言葉を目にしたとき、「空気中の湿気を吸い込んで、除去してくれる機能」と思われる方がほとんどだと思います。
しかし、実際のエアコンの除湿機能は「温度を下げることで、空気を乾燥させて、乾燥した空気を部屋に循環させる」ことで、湿度を下げています。
- 【詳しい仕組み】
- 1.エアコン内部の熱交換器で、空気から熱を奪い、気温を下げる。
- 2.気温が下がると、空気中に含める水蒸気量(飽和水蒸気量)が下がる。
- 3.飽和水蒸気量が下がると、空気中に含めなくなった水蒸気が「水になる」。
- 4.水がドレンホースを伝って、部屋の外に排出される。
- 5.乾燥した空気はエアコンから出され、新たに湿った空気が同じルートを辿る。
- 6.部屋の中に、乾燥した空気が循環することで、湿度が下がる。
もっと機械的な動きに焦点を当てて説明すると「冷やされた冷媒が熱交換器を通る際に、熱交換器に接した水蒸気が凝結して液体の水に代わり、ドレンホースを通って室外機の外に排出」される仕組みです。
「難しすぎる・・」と感じる人も多いと思いますが、ここまでのことを簡単に説明すると「温度(気温)を下げることで、湿度を下げる」ということになります。
室温が低いと除湿ができない
ここまでの説明で予想がついている方も多いと思いますが、エアコンの除湿機能は「室温が低いと、除湿効果が薄い」という特徴があります。
例えば、もともとの室温が28℃で除湿機能で室温を26℃設定にしていれば、室温を2℃下げることができるので、その分飽和水蒸気量を下げることができます。
一方で、もともとの室温が26℃で、除湿機能で室温を26℃設定にしても、室温が下がらないので飽和水蒸気量を下げることができず、除湿ができません。
ちなみに、「弱冷房除湿は気温が低いと使えないけど、再燃除湿なら気温が低くても使える」というのは間違いです。
弱冷房除湿と再熱除湿の違いと効果について
弱冷房除湿とは、名前の通り「弱冷房で除湿をする機能」ですが、これは単純に設定温度が高く・出てくる風量が少ない『冷房運転』です。
そして再燃除湿とは、「一度、温度を下げて乾燥させた空気を、少し温めて部屋に戻す」という機能で、部屋の温度を下げすぎないで除湿をする機能です。
出てくる風の温度に違いはありますが、どちらも「空気を冷やして除湿する」仕組みなので、もともとの室温が低ければ、除湿効果は薄いので注意しましょう。
掃除不足や設置場所の問題で除湿できない場合
除湿の仕組み以外にも、「掃除不足」や「エアコンの設置場所の問題」で、本来の除湿機能が十分に発揮できていないこともあります。
- 【本来の除湿機能が発揮できない原因】
- ・フィルター、室外機が汚れている
- ・部屋の空気が循環していない
- ・エアコンが古く機能低下が見られる
上記だけで「なんとなく、コレだろうなぁ~」と原因が分かった方もいらっしゃると思いますが、もう少し詳しく解説したいと思います。
フィルター・室外機が汚れていると除湿能力が落ちる
「フィルター・室外機」が汚れていると、空気の取り込み・吐き出しがきちんと行われず、エアコンの機能全般が本来の効果を発揮できません。
とくに、除湿機能は「乾燥した空気の吐き出し」が重要な動作ですが、フィルターにホコリが溜まっていると「湿ったホコリで、乾燥した空気が再度湿る」という問題が起こります。
また、汚れ防止グッズで人気の「フィルターカバー(ホコリを防ぐためのカバー)」も、運転中につけっぱなしにしていると機能低下の原因になるので、注意しましょう。
- 【対処法】
- >>>フィルター・室外機の掃除をする
部屋の空気が循環していない
「エアコンの設置場所が、部屋の空気の循環を考慮していない位置にある」場合は、エアコン本来の性能を発揮することができません。
マンションに多いのですが、「縦長の部屋で、側面にエアコン」を配置するような構造ですと、エアコンの正面がすぐ壁になるため空気が循環しづらくなります。
このような場合は「サーキュレーター(小さい扇風機)」を設置して、空気の流れを作り直すといった対処法もありますが、除湿機能に不満があるならば除湿機を買った方が満足度は高いでしょう。
エアコンが古く機能低下が見られる
エアコンは耐久家財とはいえ、年数が経つにつれて、徐々に新品のときと比べて機能の低下が見られるようになります。
とくに、メーカーが性能を保証する耐久年数は「7年(長くて10年)」で、7年以上使っていて不具合を感じたら買い替えを検討する時期と言われています。
ただ、ここまでに紹介したように、エアコンの除湿機能は「除湿機」ほどの効果はないので、除湿機能に不満があるならば買い替えではなく除湿機の購入をおすすめいたします。
エアコンの除湿機能が効かないときの対処法
ここでは、エアコンの除湿機が効かないときの対処法をご紹介いたします。
原因が分かっている方は目次から該当するものをチェックしていただくのが早いですが、原因が分からない方は上から順番にチェックされるのがおすすめです。
設定温度を5℃下げる
ページ上部でも解説しましたが、エアコンの除湿機能は「温度を下げて、湿度を下げる」仕組みなので、設定温度を低くすれば無理やり除湿することができます。
そのときの気温や湿度、部屋の広さなどによって変わりますが、理論上は「設定温度を5℃下げれば、3~5%ほど湿度が下がる」でしょう。
ただ、「5℃下げると、設定温度20℃になって寒すぎる」「運転直後は湿度が下がったけど、時間が経ったら戻る」というデメリットがあるので、根本的解決にはならないでしょう。
フィルター・室外機の掃除をする
「毎年、エアコンだけで十分除湿できていたけど、今年は効きが悪い」という場合は、フィルターや室外機に汚れが溜まっていないかチェックしてみてください。
フィルターは手で取り外して、ホコリを掃除機で吸い込むか、シャワーで水洗いします。室外機については、外装を濡れた雑巾で拭き掃除して、土埃(ほこり)を取り除きましょう。
軽度の汚れであれば簡単な掃除で十分ですが、「エアコンのフィンに固い、汚れがびっしりついている」「室外機のプロペラが汚れで固まっている」ような場合は、エアコンクリーニングを依頼した方がいいでしょう。
サーキュレーターを使った空気の循環経路の改善
「エアコンのすぐ正面が壁で、空気の循環経路がよくない」という場合は、サーキュレーターを使って、空気の循環経路の改善をしてみてはいかがでしょうか。
- 【除湿時のサーキュレーターの位置】
- 1.部屋の中央に設置し、ファンは上側を向ける
- 2.対角線上の端から、エアコンに向かって設置
もともとのエアコンの設置位置が悪ければ、サーキュレーターを使うことで、ある程度の除湿効率の向上は期待できます。
しかし、「部屋の室温が低い」「部屋の湿度が60%を超えている」ようなときは、サーキュレーターよりも除湿機を購入した方がいいでしょう。
全然効いていないなら除湿機を買った方がいい
ここまで、エアコンの除湿機能の改善策について紹介してまいりましたが、除湿機能に不満がある場合は「除湿機を買う」のが一番おすすめです。
というのも、冒頭で紹介した通り、エアコンの除湿機能は「冷房機能のおまけ」でしかなく、除湿機ほどの除湿能力がないためです。
「でも、エアコンの除湿機能と除湿機って同じものじゃないの?」と思われている方もいらっしゃると思いますので、次の見出しからは除湿機能と除湿機の違いについて解説したいと思います。
エアコンの除湿機能と除湿機の違い
除湿機の場合は、除湿方式が「コンプレッサー式」と「デシカント式」の2種類があります。
『コンプレッサー式』はエアコン同様に温度を下げて、湿度を下げる仕組みですが、冷風が出ないので「室温が下がりづらく、長時間、一定の除湿能力を保てる」というメリットがあります。
ただ、コンプレッサー式除湿機も、「もともとの室温が低いと使えない」「冷房をつけた状態だと除湿能力が落ちる」といったデメリットがあります。
一方で、「デシカント式」除湿機の方は、「吸湿剤とヒーターを使って、除湿する」という仕組みなので、室温が低くてもしっかり除湿することができます。
エアコンの除湿機能にない「デシカント」構造について
デシカント式除湿機は、「吸湿剤で空気中の水蒸気を吸いとり、ヒーターで水蒸気を飛ばして熱交換器で水に戻す」という仕組みで除湿を行います。
もっと簡単に説明すると、エアコンの除湿機能やコンプレッサー式は「空気を冷やして、飽和水蒸気量を下げる」仕組みでしたが、デシカント式は「空気中の水蒸気を吸湿して、直接取り除く」仕組みです。
デシカント式は、室温に関係なく除湿することができるので「冷房を入れた部屋でも除湿能力が落ちない」「連続運転でも、常に一定の除湿能力を保てる」というメリットがあります。
室温が低くても使えるデシカント式除湿機がおすすめ
家電売り場ですと、「室温が上がらない」「ヒーターを使わないから、電気代が安い」「なんとなくブランド(高性能)っぽい」という理由からコンプレッサー式を求められる方が多い傾向があります。
確かに、「梅雨の時期に室温を上げずに、除湿したい」というのであればコンプレッサー式除湿機がおすすめですが、「衣類をしっかり乾燥したい」「冷房つけながら、除湿もしたい」場合はデシカント式がおすすめです。
本体価格についても、コンプレッサー式もデシカント式も同じ定格除湿能力(どれくらいの部屋の除湿に向いているかを示す値)なら価格差はないので、ご自身の目的に合った除湿機を選ばれることをおすすめいたします。